2026年7月30日
プライベート市場を通じてAIエコシステム全体に世界最大規模の投資を行うブラックストーンは、AI革命をどのように捉えているのか。AIによる技術変革は始まったばかりであり、エネルギー、半導体、AIの基盤技術を開発する企業に広がる投資機会について、ブラックストーン社長兼最高執行責任者のジョン・グレイが語ります。
さらに、AIがグローバル経済をどのように変革しているのか、ジョンの経済見通し、活況なIPO市場の状況、そして不動産市場の現状についてお届けします。
ジョン・グレイ、ブラックストーン社長兼最高執行責任者(COO):「ブラックストーンの市場の見通し」へようこそ。
インタビュアー:まずは手短に、2026年4~6月期における大型の投資案件を教えてください。
ジョン・グレイ:当四半期も、ブラックストーンは大型の投資案件を実行しました。例えば、GoogleとTPU(Googleが開発した半導体チップ)の活用を支援する合弁会社を立ち上げたほか、Anthropicとは合弁会社Odeを設立し、同社のAI技術の投資先企業への実装を進めています。Broadcom(半導体およびインフラ・ソフトウェアを手掛けるグローバル・テクノロジー企業)と大型の資本提携も締結しました。また、ブラックストーンの投資先のうち、データセンターREITであるBXDC(ブラックストーン・デジタル・インフラストラクチャー・トラスト)を含む3件が新規株式上場(IPO)を実現しました。加えて、2026年7月30日には、Jersey Mike’s(サブマリン・サンドイッチを提供する大手レストラン・フランチャイズ運営会社)も上場を果たしました。欧州では、再生可能エネルギー企業のEuroWindを買収したほか、航空宇宙分野では、Senior(英国の航空宇宙機器メーカー)も買収しています。他にも、長年にわたり良好なパートナーシップを築いてきたDigital Realty(データセンター運営企業)に対して、複数のデータセンターを売却しています。また、データセンター向けエネルギー分野において、Williams Company(天然ガス供給インフラ企業)との大規模な戦略的提携を締結しました。他にもすべてをご説明するのは難しいほど、数多くの案件がありました。
私の経済見通しは、前向きです。おおよそ晴れ、時々曇りといった具合でしょうか。言うまでもなく、この見通しは中東情勢と結びついており、その影響でエネルギー価格および金利は上昇しています。一方で、ブラックストーンのプライベート・エクイティ部門は非常に良好な運用実績を上げており、実体経済の底堅さを反映していると考えています。ブラックストーンのプライベート・エクイティ旗艦戦略(BCP)における投資先企業の当四半期の売上高成長率は11%に達し、米国ではさらに力強い成長が見られます[1]。人工知能(AI)およびAI関連インフラ向けの大規模な投資が成長の原動力となっていると見られ、投資額は今後も拡大していくと思われます。例えば、1ギガワット規模のデータセンターを建設する場合、データセンター自体に150億米ドル、半導体の購入に350億米ドルが必要となります。加えて、大規模な発電所との契約も必要になるでしょう。このように、AI関連投資は様々な経済活動を生み出し、その結果、力強い経済環境を作り出しています。欧州経済や、金利上昇の影響を受けた住宅市場は軟調ですが、総合的に経済見通しは良好だと言えます。
私はAIをグローバル経済にとって新たなオペレーティングシステム(共通基盤)のようなものだと捉えています。人々の生活様式や企業の運営方法を変える存在です。AIの実装に関して、想定以上に時間や労力を要していると感じている人が多いことも理解しています。資金が適切に配分されていなかったり、期待通りの効果が得られない事例があることも否定しません。しかし、私はそうした焦りは少し早計ではないかと考えています。例えば、これまで40年間も同じ方法で運営されてきた社内の経理部門にAIを普及させるには、相応の時間を要するのです。AI技術は今後あらゆる分野に普及していくことが見込まれ、既に数多くの成功事例が生まれています。例えば、ガレージドアのロック機能を手掛けるChamberlainは、デジタル技術を用いた画期的なドアロックを新規開発し、足元の売上高は4,000万米ドルまで急成長しました。今後4~5年間で、売上高は5億米ドルを超える水準まで拡大することが見込まれています。消費者により良い製品を、より安価な価格で提供し、収益拡大につなげることが、AIがもたらす魅力だと私は考えています。そして、私たちが想像もできない新たな世界を作り出していくでしょう。
ブラックストーンは、AIエコシステム全体に幅広く投資を行っています。AIへの投資は、米国の大手データセンター運営企業であったQTSを100億米ドルで買収したことから本格的に始まりました。ChatGPTの登場以降、大量の演算処理能力を求める大手ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)からQTSのデータセンターに対する需要が急速に高まりました[2]。さらに需要が拡大することを受け、ブラックストーンはこの分野に投資機会を見出しました。データセンターは大量の電力を消費することから、エネルギー分野や輸送パイプライン、再生可能エネルギーに加え、送電網の拡大に不可欠な電気設備分野への投資を拡大するべきだと判断しました。さらに、データセンターおよび画像処理半導体を提供する「ネオクラウド」企業に対して、融資や出資を実行しました。また、エネルギー、画像処理半導体、データセンターの各分野において多額の融資を行いました。ブラックストーンが適合性のある投資家に提供する戦略において、Anthropic、Open AI、そしてxAIを買収したSpaceXといったAIの基盤技術を開発する企業に幅広く投資を開始しました。さらに、派生的な投資機会として、AI拡大による恩恵を受けて需要回復が見られるサンフランシスコの湾岸周辺にあるホテルを3件買収しています。もちろん、このような投資は規律を持ち慎重に行っています。大半は、AI革命を支える基盤インフラへの投資であり、長期的な契約に基づく収益基盤を有する企業や、借入が少なく信用力の高い大型の企業を対象としています。これらの企業の成長は、演算能力の構造的な不足に加え、その活用が経済全体へと広がる流れによって後押しされています。
以前の動画で、2026年はIPO活況の年になると申し上げましたが、足元ではその見通しが現実のものとなっています。史上最大規模のIPOとなったSpaceXが牽引し、IPOの金額規模は6倍に達しました[3]。ブラックストーンの投資先からも複数のIPOが実現しており、優良企業が上場市場において高い評価を得ることで、さらにIPOを目指す企業が増えています。2026年後半も同様の傾向が続く可能性が高いと見込んでいます。
ヘッジファンドは復活したのでしょうか。私はこれまでも存在感が低下していたわけではなかったと考えていますが、以前と比較すると投資家から前向きに捉えられていると感じています。従来は、下値リスクを抑えつつ株式市場を上回るリターンを追求するロング・ショート戦略が主流でした。現在は、魅力的な絶対リターンを確保することへと目的が変化しています。株式60%、債券40%の上場資産で構成される伝統的なポートフォリオを上回るリターンを実現し、下値リスクを抑えることで市場のボラティリティ(価格変動)の影響を軽減し、プライベート資産よりも高い流動性を確保できます。これらの特徴は、まさに個人投資家および機関投資家のニーズに合致しています。
不動産市場の回復は多くの人が想定していたよりも遅れていますが、急速な金利上昇が一因だと考えています。ご存じの通り、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴うリモートワークの普及によりオフィスビルは大きな打撃を受けました。この2年間は、「米国解放の日」や中東情勢などを背景に、金利水準の正常化にも想定以上の時間を要しています。しかし、確実に回復の兆しも見え始めています。不動産市場の本質は、需給バランスにあり、米国における主要な不動産物件の新規供給は、ピーク時と比べて60%減少しています[4]。一方で、底堅い経済環境が需要を下支えしています。物流分野において、ブラックストーンが保有するLink Logistics(北米でラストワンマイル物流施設を展開する不動産所有・運営会社)のポートフォリオにおいて、賃料および稼働率が上昇していることも、ファンダメンタルズの改善を示しています[5]。ホテル分野も回復傾向にあり、昨年マイナスを記録した既存物件の売上高成長率は、足元5%前後まで改善しています。さらに、オフィス市場も改善しており、ニューヨークでは空室率は21.5%から14.5%まで低下しました[6]。こうした需給バランスを踏まえると、金利が高止まりする局面においても、資産価値を支える追い風が吹き始めると見込んでいます。
市場全体を見渡すと、私たちは大きな技術変革の時代の中にいます。ブラックストーンはこの変革の中で、特にインフラ、演算処理、データセンター、半導体、エネルギー分野といったあらゆる側面から投資機会を捉えてきました。その結果、ブラックストーンは、実体経済のあらゆる領域で起きているAI革命の中で独自の立ち位置を築いています。そうした私たちの戦略的な投資判断により、投資家の皆様により良いリターンと成果を提供できていることを誇りに思っています。当四半期ではその一例をご紹介しましたが、今後もさらに大きな成果をお届けできるものと考えています。