プライベート・インフラストラクチャー入門
プライベート・インフラストラクチャーは、世界経済にとって重要かつ必要不可欠なサービスを提供しています。
introduction to Private INFRASTRUCTURE
プライベート・インフラストラクチャーの特徴
プライベート・インフラとは、電力やデータセンターなど、経済にとって重要かつ必要不可欠なサービスを提供・支援する実物資産を指します。
通常、長期契約や規制された事業モデルで運用されるこれらの資産は、需要の伸びが安定していることやキャッシュフローが予測しやすいことなどから、経済サイクルに左右されにくく、堅固で安定したキャッシュフローをもたらすことが見込まれます [ 4 ]。
主なインフラストラクチャー関連分野 [ 5 ]
デジタル・インフラ
デジタル・インフラ
インターネットが切り離せない存在となった我々の生活や人工知能(AI)を支えるデータセンター、人々を繋ぐワイヤレスネットワーク、大陸間をつなぐ光ファイバーケーブルなどが含まれます。デジタル化が進展する中、効率性の向上を企図して更に普及が拡大し、強固で安全かつ高速なデジタル・インフラに対する需要が高まることが予想されます。
- データセンター
- 通信基地局
- 光ファイバー
エネルギー・インフラ
エネルギー・インフラ
新たな電力源の開発から燃料の輸送に至るまで、エネルギー・インフラは世界経済を支えています。電力需要の増加は、再生可能エネルギーや従来型のエネルギーなど、様々なエネルギー源に対し、長期的に需要が高まることが予想されます。
- 公益事業/送電
- パイプライン
- 再生可能エネルギー
運輸
運輸
人や物資の輸送に関わる運輸関連インフラ資産は、eコマースが引き続き拡大しており、またレジャー・旅行が増加していることを背景として、その重要性が更に高まることが見込まれます。
- 道路
- 港湾
- 空港
- 鉄道
水および廃棄物
水および廃棄物
水資源および廃棄物を管理し、清潔な水の利用や持続的な廃棄物処理方法を確保するために重要なシステムです。
- 上下水道
- 廃棄物
プライベート・インフラストラクチャーを選択する主な理由
投資ポートフォリオの一部としてインフラ資産を組み入れることで、堅固なリターンや投資の分散効果、インフレ対策、利回りの獲得を期待することが可能と考えられます [ 6 ]。
プライベート・インフラはあらゆる景気局面において歴史的に見て、上場市場よりも低いボラティリティで、高いリターンを生み出してきました(図表1)[ 7 ]。
プライベート・インフラはまた、上場株式などの伝統的な資産クラスやプライベート不動産、プライベート・エクイティなどとの相関が歴史的に見ても低く、投資家に分散効果のメリットをもたらすことが期待されます [ 8 ]。
インフラ関連分野の事業モデルでは、インフレに連動する契約やインフレの緩和を企図した仕組みが組み込まれた契約が多く、コスト上昇時でもその影響を価格に転嫁することで、利益水準を維持することが見込まれるため、プライベート・インフラはインフレ対策としても機能することが期待されます。加えて、プライベート・インフラは長期契約に基づくため、投資家は安定したインカムが期待できます [ 9 ]。
図表1:10万ドルを投資した場合の金額推移 [ 10 ]
メガトレンドへの投資
資産クラスとしてのインフラには、橋やトンネルに限らず、例えばデータセンターのような経済の先端を行く分野も含まれます。プライベート・インフラにおける投資で高いパフォーマンスを生み出すためには、適切なセクター、市場および資産を選択することが不可欠であり、また、長期的かつ構造的な追い風を受けて、高い成長が見込まれる優良資産に注力することが重要となります。
つまり、レジャー・旅行の増加やクラウド・コンピューティング、人工知能(AI)の進展など、主要なトレンドを見極め、その領域に集中投資することが求められます。
運用会社の選択も非常に重要です。ブラックストーンは、約40年の実績を持つ世界最大級のオルタナティブ資産運用会社です [ 11 ]。
ケース・スタディ
ケース・スタディ:AirTrunk(エアトランク) [ 12 ]
2024年、ブラックストーンはアジア太平洋地域最大級のデータセンター・プラットフォームであるAirTrunkを買収しました。本案件はまた、ブラックストーンによる同地域で過去最大級の投資となっています[ 13 ]。同社への投資は、データ量の増加といった長期的なトレンドに着目し、確信度の高い投資テーマに対して大規模な投資を行う、ブラックストーンの実行力を示しています。クラウド・コンピューティング、コンテンツ制作、そして足元では人工知能(AI)がデジタル・インフラへの強固な需要を牽引していると考えられます。実際、過去3年間(2021年~2024年)で生成されたデータ量は、それ以前のすべてのデータ量の合計を上回っています(図表2)。
人工知能(AI)の台頭は、デジタル・インフラ分野の今後の成長を牽引するとブラックストーンは見ています。
シンガポール
オーストラリア
図表2:データ量の急増 [ 14 ]
(生成、消費、保存されるデータ量、単位:ゼタバイト)
インフラへの資産配分比率の増加
2010年以降、プライベート・インフラへの投資は1兆ドル超にのぼり、資産クラスとしての規模は約7倍に拡大しています[ 15 ]。また、機関投資家によるインフラへの配分は拡大しており、平均的な配分比率は、過去5年間で倍増しています(図表3)。
個人投資家のプライベート・インフラへの配分は機関投資家と比較すると著しく低くなっていますが、今日、適合性を満たす個人投資家の皆様も、パーペチュアル・ファンド(運用満期のないファンド)を通じてプライベート・インフラに投資できるようになりました。これらのファンドの特徴として、以下が挙げられます [ 17 ] 。
- 購入申し込み直後から資金が投資されるため、実際に運用が開始されるまでの資金の待機期間がありません。
- 一定の制約の範囲内で、投資家はファンドの純資産価値(NAV)に基づき、定期的にファンドの購入や解約を柔軟に行うことが可能です。
図表3:プライベート・インフラへの配分 [ 16 ]
機関投資家の配分は2018年からほぼ倍増
投資に先んじて検討すべき事項
本質的に、プライベート市場への投資とは、流動性の低い資産を積極的に保有することを意味します。ポートフォリオ全体でどの程度の流動性が必要かという点は、プライベート・インフラに投資を行う前に検討すべき重要事項のひとつです。さらに、一部のインフラ投資運用会社では「インフラに類する」資産をポートフォリオに組み込んでいることを考えると、運用会社の選択も特に重要となります。運用会社の特徴として重視すべき点としては、その規模や長年の実績、戦略的に重要な立地にある実物のインフラ資産へ投資する際の、差別化された案件発掘力などがあります。